2016.01.23 Saturday
スティーブ・ハケット
ギタリストの優劣を判断する重要なポイントの一つに、レガートで(なめらかに)弾けているかが挙げられる。レガートで弾くには、
1.左手各指の押弦タイミングは、その音が鳴るタイミングに限りなく等しい
2.左手各指が離れるタイミングはその音が終わるタイミングに限りなく等しい
3.ピッキングのタイミングはその音が鳴るタイミングに限りなく等しい
4.ピックが弦に触れている時間は極力短くなければならない
5.両手のタイミングが一致している
これら全ての条件を満たさなければならない。どれか一つでも欠けていると、なめらかには聞こえず、たどたどしくなってしまう。
しかしスティーブ・ハケットは、そのたどたどしさを武器にしてしまったギタリストと言える。あの感じがないとジェネシスの「怪奇のオルゴール」、「ファース・オブ・フィフス」、ソロでの「エイス・オブ・ワンズ」は全く違ったものになってしまう。
もちろん彼には他にもたくさんの武器がある。その一つに右手タッピング奏法が挙げられる。右手タッピングをバン・ヘイレン登場以前である70年代初頭に、あれだけやっていたのは彼ぐらいのものだろう。ただ少し地味だったので、それほど脚光を浴びることもなかったに違いない。
もう一つの武器はクラシカル・ギター奏法である。特に「アルハンブラの想い出」で有名なトレモロ奏法が彼の十八番だ。ただしそのフォームから推測するに、長年クラシック・ギターを習い続けたのではなさそうだ。おそらくギターを始めた2〜3年程度、レッスンを受け、あとは独学でやり続けているのだろう。
しかし何と言っても彼の最大の武器は、その作曲とアレンジのセンスだろう。叙情性と幻想性、転調や変拍子を駆使した展開など、これぞ英国プログレと言わんばかりである。
だが自分がもっとも彼の音楽に夢中になっていた1980年代半ばから後半といえば、そういった音楽が最もカッコ悪いとされていた時代でもあった。それでか彼はアコースティック・ソロ作2枚、中途半端な出来のエレクトリック作を出す程度にとどまっていた。
しかし21世紀に入った頃から、精力的にツアーを行い、またジェネシスのセルフ・カバー集のヒットも手伝ってか、ここ数年絶好調のようである。ギタリストとしては、不遇の80年代からフロイドローズのアームやフェルナンデスのサスティナーなどを積極的に採り入れてきたし、以前よりもプレイ自体が流暢になってきた。
最新作「ウルフライト」もそんな好調ぶりが反映された力作である。元気過ぎて、逆に昔の弱々しい蜻蛉のようなところが恋しくなったりする。
この春にはそんな彼が自身のバンドとしては初めて大阪にもやってくる。前回の来阪はプログレ・オールスターズ的なプロジェクトだったし、その後はソロで来ても東京のみだった。1990年代後半からアルバムを買うのもやめていた自分が、東京までライブを見に行くこともなかった。しかし今回は行くことにした。新作はもちろん、ジェネシス〜初期ソロ時代まで網羅した集大成的なライブとのことである。


最新作「ウルフライト」


やはりこのソロ1作目ははずせない
地味なタッピングに注目
近年のライブより
1.左手各指の押弦タイミングは、その音が鳴るタイミングに限りなく等しい
2.左手各指が離れるタイミングはその音が終わるタイミングに限りなく等しい
3.ピッキングのタイミングはその音が鳴るタイミングに限りなく等しい
4.ピックが弦に触れている時間は極力短くなければならない
5.両手のタイミングが一致している
これら全ての条件を満たさなければならない。どれか一つでも欠けていると、なめらかには聞こえず、たどたどしくなってしまう。
しかしスティーブ・ハケットは、そのたどたどしさを武器にしてしまったギタリストと言える。あの感じがないとジェネシスの「怪奇のオルゴール」、「ファース・オブ・フィフス」、ソロでの「エイス・オブ・ワンズ」は全く違ったものになってしまう。
もちろん彼には他にもたくさんの武器がある。その一つに右手タッピング奏法が挙げられる。右手タッピングをバン・ヘイレン登場以前である70年代初頭に、あれだけやっていたのは彼ぐらいのものだろう。ただ少し地味だったので、それほど脚光を浴びることもなかったに違いない。
もう一つの武器はクラシカル・ギター奏法である。特に「アルハンブラの想い出」で有名なトレモロ奏法が彼の十八番だ。ただしそのフォームから推測するに、長年クラシック・ギターを習い続けたのではなさそうだ。おそらくギターを始めた2〜3年程度、レッスンを受け、あとは独学でやり続けているのだろう。
しかし何と言っても彼の最大の武器は、その作曲とアレンジのセンスだろう。叙情性と幻想性、転調や変拍子を駆使した展開など、これぞ英国プログレと言わんばかりである。
だが自分がもっとも彼の音楽に夢中になっていた1980年代半ばから後半といえば、そういった音楽が最もカッコ悪いとされていた時代でもあった。それでか彼はアコースティック・ソロ作2枚、中途半端な出来のエレクトリック作を出す程度にとどまっていた。
しかし21世紀に入った頃から、精力的にツアーを行い、またジェネシスのセルフ・カバー集のヒットも手伝ってか、ここ数年絶好調のようである。ギタリストとしては、不遇の80年代からフロイドローズのアームやフェルナンデスのサスティナーなどを積極的に採り入れてきたし、以前よりもプレイ自体が流暢になってきた。
最新作「ウルフライト」もそんな好調ぶりが反映された力作である。元気過ぎて、逆に昔の弱々しい蜻蛉のようなところが恋しくなったりする。
この春にはそんな彼が自身のバンドとしては初めて大阪にもやってくる。前回の来阪はプログレ・オールスターズ的なプロジェクトだったし、その後はソロで来ても東京のみだった。1990年代後半からアルバムを買うのもやめていた自分が、東京までライブを見に行くこともなかった。しかし今回は行くことにした。新作はもちろん、ジェネシス〜初期ソロ時代まで網羅した集大成的なライブとのことである。
最新作「ウルフライト」
やはりこのソロ1作目ははずせない
地味なタッピングに注目
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